2013年、オックスフォード大学のオズボーン准教授が発表した論文「雇用の未来」は、世界に衝撃を与えました。
アメリカの約47%の仕事が、AIなどのコンピュータに取って代わられるリスクがあるとしたからです。
(その後、野村総合研究所の調査で、日本は約49%が相当すると調査されました)
しかも、そう遠い未来ではなく、発表した2013年から10~20年後の未来に、です。
2022年に小学校に入学する子どもが、社会に出るのは16年後の2038年前後ですから、その頃にはコンピュータが半分の仕事を担っています。
そこで、改めて、AIやRPAってどんなことができるのかを確認し、
子どもが幸せに暮らしていくために、どんな教育が必要か考えていきましょう
コンピュータが47%の仕事を奪う!?
オズボーン准教授の「雇用の未来」によれば、2013年の10~20年後に、アメリカにおける702の職業の内、約47%がAIなどのコンピュータに取って代わられるリスクが高いとされます。
According to our estimate, 47 percent of total US employment is in the high risk
category, meaning that associated occupations are potentially automatable over
some unspecified number of years, perhaps a decade or two.
THE FUTURE OF EMPLOYMENT https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf
また、「シンギュラリティ」と言って、AIが人間の知能を超える日が、2045年と言われています。(時期についてはいろんな見解があります)
2022年に小学校に入学する子どもが、社会に出るのは(ストレートに大学を卒業したとして)2038年で、30歳になるのが2045年ですから、
社会に出てバリバリ活躍しているであろう頃には、コンピュータが仕事の半分を奪い、コンピュータが人間の知能を超えていると言われています。
どうですか?
”恐ろしい”
”けしからん”
いろんな意見があると思います。
”47%は言い過ぎだろう”といった感覚をお持ちのパパママもいらっしゃると思います。
30%かもしれませんし、20%かもしれません。
しかし、今ヒトがしている仕事がコンピュータに代わられる方向に、社会が向かっていることは間違いありません。
これはノストラダムスの大予言とは違い、多くの学者が真面目に議論していることです。
AIとは何なのか説明できますか?
AIという言葉を聞かない日はないというほど、身の回りに当たり前に登場するようになりました。
- AppleのSiriなどの音声アシスタント
- お掃除ロボット
- Amazonのレコメンド
などなど日常生活に溢れています
AIの定義
では、AIとは何でしょう?
厳密には、AIに対する定義は様々です。
例えば、文部科学省が子ども向けに答えている定義では
AIとは人工知能(ちのう)(Artificial Intelligence(アーティフィシャル インテリジェンス))の略称(りゃくしょう)。コンピューターの性能が大きく向上したことにより、機械であるコンピューターが「学ぶ」ことができるようになりました。それが現在(げんざい)のAIの中心技術(ぎじゅつ)、機械学習です。
文部科学省 https://www.mext.go.jp/kids/find/kagaku/mext_0008.html
私が経営するプログラミングスク―ルLでは、小学生でも理解できるように、
シンプルに
「学習することができるコンピュータ」
という風に教えています。
AIはそれ自身が学習するんです。
AIなしのコンピュータは、予め人間がプログラムしたことしかできません。
学習するとはどういうことか
コンピュータが学習するとはどういうことでしょうか。
例えば、イヌの写真をいっぱい見せれば、イヌというのはこういうものだとAIが学習します。
そして、見たことがないイヌの写真を見せたときに、「イヌ」と答えることができます。
これはヒトの学習過程と同じなんです。
生まれたばかりの子どもは、これがイヌなのか、ネコなのか、何なのかよくわかりませんよね。
イヌやネコを見かけるたびに、パパママや周りの大人が「これはイヌだよ」と教えてあげると、だんだんとイヌというのはこういう動物だと分かるようになります。
これはイヌだよ
このように正解はこれだと示して、学習することを、「教師あり学習」と言ったりしますが、覚えなくて構いません。
大事なのは、
たくさんのデータを与えることで、AIは学習していきます。
ということです。
RPAとは何か?
AIと並んで、ビジネスの世界ではよく耳にする「RPA」とはなんでしょうか。
RPAとは、Robotic Process Automationの略です。
”オフィスのロボット化”と捉えて頂ければよいです
かつて工場で手作業で行っていたことは、
その多くが機械化(ロボット化)されました。
ブルーカラーのロボット化です。
それに対して、オフィスで、ヒトがPCで行っている操作を請け負うのが、RPAです。
RPAにより、ホワイトカラーをロボット化することができます。
例えば、請求書をもとに、支払伝票を入力するといった業務を、ロボットが行います。
”この項目は、ここに入力する”
など決められたルール通りに、RPAが処理していきます。
ロボットと言うと、目に見えるロボットの形を想像してしまいますが、
実際には、RPAはかたちあるものではなく、PCにインストールすることで、動くソフトウェアです。
ヒトがいないのに、ヒトが動かしているかのように、PCを操作することができます。
ヒトが実行するよりも、正確に処理してくれ、
しかも、24時間365日、休みなく働くことができます。
働き方改革なんてなんのそのです。
RPAは既に世の中に溢れており、低コストで導入できるものもあります。
一度導入してしまえば、プログラミングスキルがなくても、自由に新しいロボットをつくることができるのも特徴です。
今後ますます浸透していくことが予想されています。
RPAの導入状況については、こちらの記事が参考になると思います。
ヒトにできることは何か
ここまで、AIとRPAについて見てきました。
AIやRPAがオフィスで活躍する時代に、
ヒトは何を武器に戦っていけばいいのでしょうか。
自分の想いを、周りを巻き込んで実現できる力
ひと言で言うと
自分の想いを、周りを巻き込んで実現できる力
が必要だと私は考えます
- 自ら主体的に考えて行動することが求められます
- 自分が考えた意見を主張できる自信が必要です
- 創造したことを形にするために想像力が必要です
- 周りをモチベートして、協力できる対人能力が必要です
全てヒトにしかできないことです
AIに意志はありませんし、創造することもできません。
周りをモチベートすることもできません。
余談ですが、最近ではAIが作曲するなんてことができます。
これも、過去のたくさんの曲をAIが学習して、その組み合わせで新しい曲にしているということで、創造しているわけではありません。
これらのヒト特有の力を、高いレベルで持っていれば、
AIやRPAが活躍する時代でも、幸せに暮らすことができるはずです。
6Cs
私が考える、「自分の想いを、周りを巻き込んで実現できる力」は、6Csの概念を土台にしています。
参考:「科学が教える、子育て成功への道」Kathy Hirsh-Pasek、R.M.Golinkoff 2017
6Csとは、アメリカのキャシー・ハーシュ=パセックとロバータ・ミシュニック・ゴリンコフが、子どもたちの将来の「成功」に必要なスキル(新たな教育モデル)として提唱した概念です
AIとは何かを理解した上でこの6つを見ると
AIができるのってContentぐらいだなということが分かります。
残り5つは、ヒト特有の力です。
パパママの周りの、仕事をできる人、社会に出て活躍できる人を思い浮かべて見てください
この5つの力を備えてませんか?
特にCollaborationやCommunicationって大事じゃないですか?
いつの時代もヒトは、ヒトとヒトのつながりの中で、発展してきました。
どんなスーパーマンでも1人でできることは限られています。
AI時代に羽ばたく子どもたちへできること
時代は変わり、求められる力は刻々と変わっています。
しかし、教育の現場はほとんど変わっていないのが実態です。
GIGASchool構想のような動きはありますが、HOWをいくら変えても、根本的な思想が変わっていないように見えます。
物事には正解があり、それを覚えることが重要だ
正解を知っているのは先生で、それを大人しく聞くことが良い生徒だ
全員横並びで進み、フライングしてはいけない(例.まだ習っていない漢字を使ったら叱られる)
などなど
先生が悪いんでしょうか?
そうではありません。
40人の子どもを1人の先生が見るので、こうしないと収拾つかなくなるからだろうなと思います。
余談ですが、中学校だと、工藤勇一さんが校長を務めていた麹町中学校のように、学び合いを上手く取り入れて、新たな教育をされている事例があります。
しかし、小学生ではなかなか難しいでしょう。
公教育は、これからもContentを養い、最低限の知識をつける場と割り切った方が良さそうです。
放課後の時間で鍛えるしかありません。
プログラミングが最適な題材である理由
これらの力を鍛える題材としてプログラミングは最適だと考えます。
プログラミングというと、パソコンに向かって黙々と作業をするイメージをされる方も多いですが、
プログラミングスクールLでは、CollaborationやCommunicationを大事にしているので、
子ども同士で協力したり、相談することを推奨しています。
プログラミングって答えが一つじゃないので、「僕はこうやったよ」、「私はこうつくりたい」など、積極的に促さなくても、自然と子どもたちのコミュニケーションが発生します。
(盛り上がり過ぎて困ることもありますが。。)
そして、プログラミングという技(ワザ)を身につけると、「こんなものをつくりたい」や「こんなことを解決したい」という発想(Creative Innovation)が生まれてきます。
こんなものをつくりたい
こんなことを解決したい
こちらの記事で紹介している、飲み過ぎ防止プログラムやヤンバルクイナ危機一発などは、身近な問題をプログラミングで解決した好例です。
そうして自分の手で何かを創り上げた体験や、身近な問題を解決した体験は、自信(Confidence)に繋がり、新たな挑戦の糧となります。
プログラミングを通じて、論理的思考、構造化思考は養われていきますので、こうした考える力があれば、Critical Thinkingも身についていくことになります
このように6つのCを身につけるのに、プログラミングという題材は最適なのです。
一つ注意して頂きたいのは、今までの教科と同じようにプログラミングを”教え”てはダメだということです。
つまり、やることと正解が決まっていて、その手順に沿って1人で黙々とこなすようなプログラミングは要注意です。
プログラミングを題材として、生徒同士が学び合い、自ら気付きを得ることが大事で、
そこに正解など必要ありません。
まとめ
”AIやRPAに仕事を奪われる”と恐れ、何とかそれを阻止しようと躍起になっている人もいますが、
AIやRPAはヒトを不幸にするのではなく、
むしろ、ヒトを幸せにすると思います。
- 正確性を求められる反復作業
- 膨大な量の情報を覚えること
- 長時間の集中を要すること
などヒトが苦手としている作業に、実は今まで苦しめられてたんじゃないかと考えています。
その苦しみからの開放です。
1日8時間も働く必要はないんです。
仕事のために何かを諦めながら死んでいく必要はないんです。
ヒトが得意とする、クリエイティブなことや、ヒトとヒトが交わること、ユーモア溢れることなどに時間を使えるようになると思います。
過労で追い込まれて自殺するなんて世の中は、この100年程度の負の遺産として、後世には引き継がれないようにしたいです。
そのためにも、子どもたちが羽ばたく未来の社会を想像して、今できる教育をしていきたいと思います。
いかがでしたでしょうか。何か一つでもご参考になれば幸いです。
SNS等でシェアして頂けるととても励みになります。
私は、将来につながる「プログラミング」教育を、日本中の子どもたちが平等に受けられるようにしたいと思っています。
今のままでは一部の学校の子どもたちだけがそのメリットを享受し、そうでない子どもたちは置いてけぼりになってしまいます。
これ以上教育格差が拡大してしまうのは、何としても止めなければなりません。
この新しいチャンスをすべての子どもたちへ