”一人ひとりを尊重しながら自立と共生を学ぶ教育”、イエナプラン。
イエナプランをオランダで広めた、スース・フロイデンタール・ルッターが、イエナプラン・スクールで働く人たちが自らを振り返るための枠組みとして提示したのが、8つの基本原則(8つのミニマム)です。
フロイデンタールが示したかった根本思想
フロイデンタールが8つの基本原則を通じて示したかったことは、
子どもを育てるという観点こそが最も優先されるべきだということです。
政治の都合や、保護者の都合や、先生の都合ではなく、子どもたちを育てることです。
「教える」ではなく、「育てる」なのです。
日本的に言うと、「全人教育」に近いかもしれません。
例えば、愛知県にある海陽中等教育学校は2006年、トヨタ自動車、JR東海、中部電力をはじめ、約80社の賛同企業からの寄附によって開校した全寮制の男子中高一貫校ですが、基礎学力と人間力をバランスよく鍛える『全人教育』を行うことを方針としています。
少し話が逸れましたが、そんな思想ですので、イエナプラン・スクールの先生(グループリーダーと呼ぶ)は単に教育者ではなく、人間としての子どもを育てる養育者であるとしています。
8つの基本原則(8つのミニマム)
さて、それでは中身を見ていきます。
インクルーシブな考え方を育てる
自分の利害 対 集団の利害
私の幸福は、他の人たちの犠牲の上、または、存在なくして得ることはできないが、それは、私が他の人の幸福を願い、そのために働こうとする時にのみ得られるものである。
学校のあり方を人間的で民主的なものとする
デモクラシーを通して、あるいはより良い言い方をすれば、ソシオクラシーを通じて、皆で一緒に決定する
子どもも大人も同じく『生と学びの共同体』の 一員として、発言していかなければならない。
対話
自分のためにではなく、お互いを、共に
『生と学びの共同体』においては、お互いに対して話しかけられ、説明される。こうした対話は人と仕事と遊びと催しとをつなぐものである。
教育の人類学化
生徒に対して人間として生きている子どもであることを認めることの大切さ
学校は子どもたちのためのものである。子どもの利益がすべてに勝る。子どもを養い育てることが、教育よりも優先される。人は養育をしないわけにはいかない。学校は、経済、宗教、その他の、いかなるものの、何らかの利益に関わる政治の道具となってはならない。
ホンモノ性(オーセンティシティ)
あるがままに、そして、ホンモノの現実
大人も子どもも、可能な限り、あるがままのホンモノの自分自身でなければならない。それぞれが自分らしく、ありのままでいられるゆとりを、できる限り多く、お互いに与え合わなければならない。現実との出会いもまた、できる限りホンモノでなければならない。見せかけの現実であってはならない。
自由
協働のために努力する
自由は、『生と学びの共同体』がもつ共同的で自立的な秩序を通して生まれる。人は、自分で決断を下し、物事の成り行きに対して影響を与えることができるからこそ、自由を得るのだ。ファミリー・グループ、学校、そして、『生と学びの共同体』のために、みんなで一緒に責任をもつのである。
批判的思考を育てる
答えを問い直す
生産的に考える力、つまり、個々の子どもの世界観の中に、新しい情報を取りこみ、統合させていく力を伸ばす。何でもかんでも、甘いお菓子のように鵜呑みにするのではなく、物事がもっている意味や有用性を問い直す力を育てる。
創造性
想像力
学校では創造性に対して十分な関心が払わなければならない。その際、何かを生みだすことが重要な役割を果たす。しかし、感情や美について表現することも、誰か他の人の立場に立ってものを考えられるということ(共感)も創造性にとって重要である。
20の原則に繋がる
フロイデンタールがまとめた8つの基本原則は、後に、ケース・ボットとケース・フルーフデンヒルによって、20の基本原則としてさらに進化しました。
20の原則については、こちら
参考文献
- 「イエナプラン 共に生きることを学ぶ学校」著フレーク・フェルトハウズ、ヒューバット・ウィンタース
- 日本イエナプラン教育協会 http://japanjenaplan.org/jenaplan/rule/