イエナプランの活動の指針として、フロイデンタールの8つのミニマムをベースとして、20の基本原則が示されました。
この20の原則をまとめたケース・ボットが、「21世紀に向かうイエナプラン」というタイトルで著した理論書の中に、6つのクオリティ特性を整理しています。
6つのクオリティ特性の目的
6つのクオリティ特性は、イエナプラン・スクールの特徴を整理したものです。
イエナプラン・スクールを立ち上げる際の指針となりますし、またイエナプラン・スクールとして認定を受けるための条件にもなります。
オランダでは、これらのクオリティ項目の条件を満たしているとされる学校が、イエナプラン・スクールとして認定されます。
では、早速中身を見ていきましょう
イエナプラン・スクールは経験を重視する
子ども一人ひとりに多くの経験をさせること、経験を通して学ぶことの大切さが、明確に説かれています。
私たちは学校で、子どもたちに多くの異なる経験をさせる。
「イエナプラン 共に生きることを学ぶ学校」著フレーク・フェルトハウズ、ヒューバット・ウィンタース
つまり経験を通して学ぶのである。それは経験を尊重すること、すなわち子どもたちの経験を活用することを意味している。
この経験の重要性に関する指標としては、
例えば以下のようなことが示されています。
- グループリーダーは子どもたちと経験を重んじた対話をしている
- 教室内に置かれる物の配置や装飾はそのグループの子どもたちが決めている
経験を重んじた対話をすることや、
子どもたちの経験の場である、教室の配置や装飾は、子どもたち自身で決められることが、
示されています。
日本のよくある教室とはちょっと違いますね。
イエナプラン・スクールは発達を重視する
2つ目として、発達の重要性を説いています。
発達は重要というのは異論の余地がないと思いますが、
そのために”多面的な”能力を発達させること、できる範囲よりちょっと背伸びしたことにチャレンジすることの
大切さを説いているのだと思います。
子どもたちは、多面的な能力を発達させ、最大限の力をさらに乗り越えるようにとチャレンジしている。
どのように学ぶべきかを学び、発達を刺激し、熟考された教材を用いて、最近接領域(自分1人でできることのすぐ次の発達領域)の発達を経験する。達成感をもつこと。
「イエナプラン 共に生きることを学ぶ学校」著フレーク・フェルトハウズ、ヒューバット・ウィンタース
これは、全員横並びの教育では、難しいですよね。
日本の教室は、中の下に合わせているという人もいますが、もしそうだとすると、
大半の子どもたちは、退屈しているでしょう。
指標として示されているのは、例えば以下のようなことです。
- 子どもたちは、自分の最大限の力まで取り組み、達成感を得るためにチャレンジしている
- たくさんの個別のニーズに合わせて分化された状況や課題を使って仕事をしている
イエナプラン・スクールは協働的
イエナプランでは、社会性が重視されます。
そこに通う子どもたち、およびグループリーダー(担任の先生)は、共同体であり、
共に働き、助け合うことが求められます。
共に働き、助け合い、お互いを思いやり、共に話し、共に遊び、共に決定し、共に祝う。
「イエナプラン 共に生きることを学ぶ学校」著フレーク・フェルトハウズ、ヒューバット・ウィンタース
これらすべてのことは、学校を<生と学びの共同体>にするものである。
学ぶとは社会的に学ぶこと、つまり共に問題を解決し、共に評価するということだ。
自分の勉強さえきっちりやっていればいいのとは違います。
この点はとても大事だと思いますし、これができるからこそ、
”わざわざ”学校に行く価値があると思います。
指標として示されているのは、例えば以下のようなことです。
- 何かの仕組みについて共に探求するサークル対話をしている
- 共に意思決定することを練習している
私が経営するプログラミングスクールLでも、この協働する力、
つまりCollaborateする力をとても大事にしています。
イエナプラン・スクールは世界に目を向けている
「ワールドオリエンテーション」という言葉が出てきます。
これはイエナプランで大事にしている活動の一つで、実際に世界で起こっていることについて、教科学習で学んだことを活用し、グループのメンバーと協力しながら総合的に学びます。
日本で言う「総合的な学習の時間」に近いと思います。
協働で探求的に学ぶこと、社会と結びつけて学ぶことに大きな意義があります。
ワールドオリエンテーションは、教育のハートである。大小の時事に多くの関心を向けることで経験し、発見し、探求することに特徴をもつ
「イエナプラン 共に生きることを学ぶ学校」著フレーク・フェルトハウズ、ヒューバット・ウィンタース
日本の総合的な学習の時間は、その活用のされ方に、学校感格差が大きいと聞きます。
学校で学んだことと世間(社会)とのつながりを理解することや、
社会とのつながりを通して学ぶことをイエナプランでは特に重視しています。
ゴールが受験ではなく、社会に出て幸せに暮らすことだからです。
この差は小さいようで大きいと私は思います。
指標として示されているのは、例えば以下のようなことです。
- 教育は「生きた現実の近く」にあるべきものである
- 社会や文化における変化に対して批判的に思考している
イエナプラン・スクールは批判的に思考する
「批判的に思考する」というと、多くの保護者から反発を受けそうですが、
イエナプランではこれを前面に押し出しています。
批判的というワードがあまりいい印象を与えないのだと思いますが、
私は、”別の角度から物事を捉えることができる”という風に意訳しています。
物事に対して、多様な見方ができるというのは、寛容さを生みますし、
多様なメンバーと協同できるということだと思います。
イエナプラン教育は、人間的かつ生態学的な持続可能な共同社会に向かって働くことを目指している。
「イエナプラン 共に生きることを学ぶ学校」著フレーク・フェルトハウズ、ヒューバット・ウィンタース
つまり、共同社会と文化における発達という観点から、批判的かつ建設的な態度を発達させるということである。こうしたことは、まず自分の家庭において、そして、学校で始まる。
イエナプランスクールは、子どもたちが批判的に思考することを学ぶように望んでいる
批判的かつ建設的とされている通り、単に批判的な見方ができるというだけでなく、
違った観点からの建設的な意見を出せるというのがポイントだと思います。
こんな小学生がいたら末恐ろしいですね。
指標として示されているのは、例えば以下のようなことです。
- 違いを受け入れることを学び、意見の対立やコンフリクトの形や、それを乗り越えるための可能な方法を学んでいる
- 「そういうものなのだ」という思い込みに対して疑問を投げかけている
イエナプラン・スクールは意味を求める
物事の意味を考える、つまり上辺ではなく、深く考えることを目指しているとされます。
イエナプラン・スクールは哲学的・実存的な問いに関心を払い、物事の意味を考えるよう目指している。それは、受動的に「耳を傾ける」形式になりがちかもしれない。
「イエナプラン 共に生きることを学ぶ学校」著フレーク・フェルトハウズ、ヒューバット・ウィンタース
しかし、「誰か他の人のために努力する」というように、能動的に「自ら取り組む」形もあり得る。
また、何かについてその意味を問うことや、宗教的・非宗教的な意味をもつ経験について、共に深く考えることでもある。
指標として示されているのは、例えば以下のようなことです。
- ストーリーや対話の中で、意味や意義を経験する
- 哲学的対話の中で、子どもたちの実存的な問いに注意を払っている
参考文献
- 「イエナプラン 共に生きることを学ぶ学校」著フレーク・フェルトハウズ、ヒューバット・ウィンタース
- 「公教育をイチから考えよう」著リヒテルズ直子、苫野一徳
- 日本イエナプラン教育協会 http://japanjenaplan.org/jenaplan/rule/